一般歯科
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カリオロジーの考え方に基づいたむし歯治療
「カリオロジー」とは、むし歯学、むし歯論という意味です。従来の歯科医療は、むし歯になった歯を削って詰めたり被せたり、歯を抜いて入れ歯を入れたりなど、いわば病気になってしまったあとの治療でした。しかし今は、むし歯になる過程をしっかり理解してむし歯を予防し、健康な歯を守り育てる歯科医療へと移行することが必要と考えられるようになりました。
単にお口の中を診察してむし歯や歯周病を治療するというだけでなく、お口の中の病気に関わるさまざまな要因を理解した上で一人ひとりの患者さまに対応していく必要があります。それがカリオロジーの考え方です。
むし歯のメカニズムに効果的に働きかける治療と予防
カリオロジーが教えてくれることは、むし歯のできる過程にある「脱灰と再石灰化」という作用です。食べ物を食べると、甘い物でなくてもお口の中が酸性となります。酸性のままではカルシウム分が流れていきます。これがいわばミクロのむし歯で、甘いものを食べて2時間でできています。これが脱灰です。その後、唾液などお口の中の環境によって元に戻そうとする再石灰化が起きます。この元に戻ろうという再石灰化の力が強ければむし歯にはなりません。脱灰という歯を溶かす作用の方が強ければすぐむし歯になってしまいます。一般的には唾液の働きで中性になりますが、体質的に中性に戻りやすい方と戻りにくい方がいます。
こうしたむし歯のメカニズムに働きかけ、歯科医院で行うプロフェッショナルケアとご家庭でのケアを組み合わせれば、お口の中の健康を確実に保つことができます。
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う蝕検知液などを使い、できるだけ削らない治療を実践
むし歯治療を行う上で最も大切なのは、細菌に感染した歯質を完全に除去することです。取り残しがあると再発を招きます。しかし、どこまで削るかの判断は歯科医師でもとても難しく、多くの場合はむし歯の硬さを頼りに、柔らかくなった部分を削っていきます。
当院では、細菌に感染した取り除くべき部分が赤く染まるう蝕検知液を使い、むし歯を細かいところまでチェックします。感染した部分の取り残しがないように、また健全な歯質を削り過ぎないようにていねいに除去を行い、むし歯の再発や歯がもろくなることをできるだけ防ぐように心がけています。
<う蝕検知液を使うメリット>
・削り過ぎを防ぐ
・むし歯の取り残しを防ぐ -
むし歯の進行度と治療
痛みはなく、歯の表面に小さな穴があいている
症状:歯の表面を覆っているエナメル質がむし歯菌によって溶かされています。歯に小さな穴があいていますが、まだ象牙質に達していないため痛みはありません。
治療:細菌に感染した部分にフッ素などを用いて再石灰化を促します。冷たい物や甘い物を食べたときにしみる
症状:むし歯が象牙質に達しているため、冷たい物や甘い物がしみて、歯に触ると痛みを感じます。
治療:むし歯の範囲が小さい場合は保険適用の白い詰め物をし、むし歯の範囲が広い場合は麻酔をかけてむし歯の部分を取り除き、詰め物を製作して装着します。激しい痛みを感じる
症状:むし歯菌がエナメル質と象牙質を溶かし、神経まで達した状態です。激しい痛みを感じることが多く、神経が壊死してしまった場合は膿が出たり、歯ぐきが腫れたりします。
治療:根管治療が必要です。麻酔をして壊死した神経や膿を取り除き、被せ物を装着します。症状によっては歯を抜く場合もあります。 -
神経まで達してしまったむし歯は根管治療を実施
神経まで進行してしまった深いむし歯は、細菌に感染した神経を取り除く治療が必要です。これが根管治療です。根管は、曲がっていたりでこぼこしていたり複雑な形をしています。当院では、精密な治療ができるよう、常に電気的根管長測定器を使いながら根管の中をきれいにします。
神経を取り除いてしまうと痛みが治まりますが、治療を途中で止めてしまうと根が腐ったり歯がボロボロになったりして、最後には歯を抜かなければならなくなります。根気よく最後まで治療することが大切です。また治療後も、定期的な検診を受け、歯を守ることが大切です。
根管治療の流れ
【STEP1】治療前の歯の中は...
歯がズキズキ痛むむし歯の場合、根の中がたくさんの細菌の棲み家となっています。このままでは全体が腐ってしまいます。
【STEP2】悪い部分を取り除きます
腐った部分を取り除き、ていねいに掃除と消毒を繰り返します。膿が溜まっているときは、膿が出なくなるまで何回も行うため時間がかかることもあります。痛みはこの時点で治まりますが、ここで中断すると再び細菌が棲みついて治療前よりも悪くなり、骨の中に膿が溜まることもあります。
【STEP3】防腐剤を詰めてから被せ物をします
根の中に細菌が入らないよう歯の根に防腐剤を詰めて密閉する処置を行い、芯となる柱を立てます。さらに型を採って被せ物を製作し、きれいになった根元に接着してしっかり噛めるようにします。●歯の神経
むし歯ができると痛みを感じます。これは歯の中の歯髄(しずい)と言われる部分に神経が通っているからです。歯髄には神経のほかに血管が通っており、歯に栄養を与えたり酸素を運んだり、免疫などの防御反応を伝達するなどの重要な役割があります。歯の神経はエナメル質と象牙質に覆われており、通常は問題になることはありません。
むし歯が神経まで進行すると、やがて神経が病んで化膿し、場合によっては顔が腫れたり、細菌が全身に回って熱が出たりすることがあります。この被害を食い止めるために、歯の神経を取り除く治療が必要となります。
●歯を守るために神経を守る
歯の神経がなくなると痛みは感じなくなります。しかし、血管を含めた歯髄全体を取り除くため、神経を取り除いた歯は血が通わなくなって栄養が届かず、やがて歯本来の抵抗力がなくなり、枯れた木の枝のようにもろく欠けやすくなります。また再びむし歯になっても、それを伝えるセンサーを失っているため、むし歯の発見が遅れてしまいます。
このように、歯の神経はとても大切です。神経を残すことができるよう、むし歯が進行する前に、早期に治療をしましょう。 -
知覚過敏
むし歯でもないのに、冷たい物や熱い物を口にしたときに歯がしみる知覚過敏。4人に1人が経験したことがあると言われる、とても身近な症状です。
知覚過敏の原因は、歯ぐきの退縮、酸蝕歯、間違ったブラッシング、偏った噛み合わせなどにより、象牙質と呼ばれる歯の敏感な組織が露出してしまうこと。露出した象牙質にある象牙細管というパイプを通じて歯随(歯の神経)に直接刺激がいくため、瞬間的な痛みが生じるのです。
放置していても問題なく、自然に治る場合もありますが、歯周病や歯ぎしりの一症状の可能性もあり、治療の必要があるかどうかの診断は必要ですので早めの受診をお勧めします。その結果、純粋の知覚過敏であれば、しみ止めのお薬を塗布したり、正しい歯磨きやご家庭でのケアをアドバイスしたりしています。
●知覚過敏の症状
次のような症状があれば要注意です。
・冷たい物、熱い物、甘い物を食べたり飲んだりするとしみる
・冷たい空気の中で息をしたときにしみる
・ブラッシング中、歯ブラシの毛先が当たったとき、うがいをするときなどにしみる -
親知らずの治療
親知らずとは、第三大臼歯のことです。永久歯は、真ん中から奥にかけて7本ずつ上下左右に28本ありますが、さらにその奥、8番目の位置にある奥歯です。20歳前後に生えてくることが多いのですが、顎に親知らずが生えるスペースがないため部分的に歯肉に埋もれていたり横を向いていたりすることが多く、上下の親知らずがきっちり噛み合って歯本来の役割を果たしていることは比較的まれと考えられています。
その結果、歯磨きがきちんとできなくなるため、むし歯になったり歯肉が腫れて痛んだり、親知らずの手前の歯が悪くなる原因になったりすることが多くなっています。
親知らずの抜歯
親知らずの抜歯については、生え方・位置・歯の形によって歯を抜く処置の難易度もさまざまです。あっという間に終わってその後何ともない程度のものから、抜歯に時間がかかり、痛みや腫れが数日残る場合もあります。当院では経験豊富な歯科医師が親知らずの治療についても対応します。当院で治療ができない難症例の場合も、責任を持って大学病院などにご紹介しますので、ぜひ気軽にご相談ください。
<親知らずを残しておくメリット>
・処置をしないで済む(処置後の痛みや費用など)
・歯が抜けたところに移植できる場合がある(親知らずがきれいに生えている場合など)<親知らずを抜くメリット>
・手前の歯までむし歯になるリスクが減る
・親知らずが原因で起こる腫れや痛みの再発がなくなる